それはあなたが望んだことですか

『それはあなたが望んだことですか − フェミニストカウンセリングの贈りもの

河野 貴代美 編著

四六判 ソフトカバー 254頁
ISBN978-4-380-20000-7 C0036
定価:本体1700円+税
(カバー画:河野 貴代美)

 

<フェミニストカウンセリングからの贈り物>フェイスブックページ

 

<書評・紹介記事>

1960年代後半に登場したフェミニズムは、女性差別の実態に焦点を当て、それが社会構造から起きていることを訴え、「個人的なことは政治的なこと」というスローガンに結実していきます。
フェミニストカウンセリングもフェミニズムの進展とともに歩を進め、女性の被差別的状況から引き起こされる心理的困難からの脱却・回復に手を貸してきました。
全国のフェミニストカウンセリングルーム等での相談事例をもとに、現代を生きる女性が抱える問題を共に考察し、未来に向けた提案をしていきたいとの思いで本書は編まれました。
フェミニズム発祥以降、女性が置かれている状況が変化し、女性個々人も変わってきている現状について、それがどのような実態なのか、なぜそのような変化が起きているのかを事例を通して再考し、次世代への提案に結び付けていきたい。
フェミニストカウンセリングの掲げる心理的困難からの回復目標の基盤に、「自分を大切に思うこと」があります。
これは「あなたはあなたであってよい」という大事な自分感覚の育成につながる認識です。女性が自分を語り、受け止められ、その中でフェミニズムのメッセージを受け取る機会をつくることが私たちの願いです。
今を生きる女性たちがフェミニストカウンセラーに出会う瞬間を記録した本書で、あなたもぜひフェミニストカウンセラーの仲間たちに出会ってください。

★商品はこちらからもご購入いただけます。







<もくじ>

◆ 第1章 女性の生きにくさとフェミニストカウンセリング

今なお、さまざまな制約の中で生きている女性/期待されていなかった誕生と「ちゃんとしなさい」という教え/跡取りである男は特別な存在/自分が家の負担になるわけにはいかないと就職/望まれて結婚するのが幸せと説得される/「子どもはまだ?」の出産圧力/「やりくりは女の仕事」/初めて受けた夫からの身体的暴力/家を手放し、家計を支えることに/子どもの独立後やってきたうつ状態/女性の低賃金と低年金が引き起こす老後の不安/湧き上がる夫への怒り/ゆっくりあわてずに自分の気持ちを確かめながら

◆ 第2章 悪いのはあなたではない――性暴力・ハラスメント

被害者に伴走する/性被害を語る力/事例1過酷な子ども時代。私は母と違う/事例2実父による性虐待/自己否定から自傷行為に/事例3今も生きている実感が持てない/事例4ネグレクトから生きのびるために/事例5突然のセクハラに抵抗できなかった/性被害は「魂の殺人」?/性犯罪が不同意罪でない日本の現状/80年代から#MeToo運動まで/キャンパスセクハラ裁判を闘って――「元の自分に戻りたいとは思わない」

◆ 第3章 私のことは私が決める――パートナーシップの行方

女性の性的主体性/事例1妻子のある男性との「淡い関係」/事例2ここにいない夫/事例3婚外関係によって自尊心を取り戻す/事例4年下男性とのセックスで女としての自信を回復/再婚は考えていない/性をめぐるコミュニケーション/当たり前を疑ってみる/性的主体としての自分を肯定的に受け止める/パートナー関係の多様性/すべての人が多様な性の当事者――「LGBT」から「SOGIE」へ/トランス女性排除に毅然とした反論を/レズビアンカップルが子どもを持つこと/求められる当事者の人権への配慮/個人の信条や選択が踏みにじられてはならない

◆ 第4章 さまよう家族

立ち位置によって違う家族像が表れる●家族のありようが桎梏になっても離れられない関係性/自分の行動も自分で決められない現状を変えたい/壮絶な結婚生活での抑圧と孤立/ジェンダー規範にとらわれている自分への気付き/自らの意思で有料老人ホームへ/自分で人生にピリオドを打つという選択
モラハラから家族を考える●モラハラに気付くこともできず自分を責める/突然機嫌が悪くなり延々と説教する夫に耐える日々/夫の帰宅時間が近付くと心臓がドキドキ、うつ状態に/愛情という名を使った支配だと気付く/「あなたは悪くない」と言ってくれる場や人が不可欠/かみ合わないコミュニケーションによるストレス/家族システム自体を問い直す視点が必要
面会交流から見える家族の姿と子の福祉●離婚調停をめぐる子どもと親の面会/増加している面会交流の審判事件数/面会交流がうながされる現状/毎日の「愛している」という言葉の重み/彼の存在自体が恐怖の対象に/「子の福祉を配慮して」というけれど/DV被害者親子にとっては面会交流が大きな壁に/子の福祉に反する面会交流も存在する
家庭内でケア役割に埋め尽くされる女性●子どものケアからいつまでも解放されない母親/夫の暴力から義母と娘を守るのが精いっぱい/娘から「子どもを捨てた」と非難される/夫の死後も娘の離婚をめぐる問題が/娘からの暴力、お金の無心が続く/子どもの人生の責任者は子ども自身/初めて自分の人生を生きたいと思うように

◆ 第5章 あなたはどうしたいの?――フェミニストの娘たち

世代交代はなったか、ならなかったか/かたちの違う支配性/事例1専業主婦を選んだフェミニスト/時代の中にあらためて位置付ける/事例2幸せでない母、娘のジレンマ/事例3反面教師としての母親とヤングフェミニストの娘/事例4フェミミニストの母と娘のあつれき/やわらかいフェミニストであること――母から娘へのメッセージ

◆ 第6章 手のひらから世界に接続する若者たち

若年女性はどのような状況に置かれているのか●「居場所のない」女性たち/インタビュー自分を大事にするということがわからない
土台にある性暴力被害体験●性虐待は女性に対する「最初の暴力」/事例1自分は悪くないという思いと自責の念と/事例2「がまんすればいずれは終わる」とやり過ごす/相談支援機関は幼い頃の彼女には出会わない/事例3どうしたら外に出られるようになるのでしょうか/性暴力被害は20代までに集中
デジタルな性格を持つ性被害●現代的手法で法の網をかいくぐる犯罪
ツイッターの中で何が起きているのか●性行為は「貨幣」になったのか/事例4家出してネットで知った男の世話に/「死にたい」とつぶやく背景に見えるもの/なぜ若い世代の苦しみが放置されているのか
ジェンダーの固定化と「性の消費のシステム」●性の消費のシステム」形成の経緯/「用意された」二つの生計の手段
「女性であることを使う」理由●役割モデルとしてのアイドル/「女性性の活用」と「美醜」/性虐待・性暴力被害は「性化行動」につながる
「自分自身になること」のサポートが求められている●「それはあなたが本当に望んだことですか」
シスターフッドを取り戻す●彼女たちの未来のために私たちにできること
■ポルノ被害の現実と支援について

◆ 第7章 もっと「わがままに」は難しい?――超高齢期を生きる

「迷惑をかけたくない」と言うけれど/精神的問題も含めた「老い支度」が重要/「人生100年」という超高齢社会へ/事例1食べたいときに食べ、寝たいときに寝る、今の暮らしも悪くない/流れている時間の質がリアルな生活空間にいる人ではないよう/事例2「できることは自分でやりたい」と「もう逝きたい」という思い/「在ること(being)」の価値を考えたい/事例3寂しさはしのぎようがあるが、虚しさは耐えるしかない「虚しさはペットボトルを飲んだら空っぽになる、あの感じ」/「わがままに生きる」ことが難しい高齢者たち/あらゆる「生」は生きている限り意味はある

◆ 第8章 女同士の育ち合い――友情について

自己形成のためのツールがなかった思春期/『ののはな通信』との出合い/シスターフッドで女性同士が成長していく/事例1学生時代の親友関係が卒業後は疎遠――消滅バージョン/事例2亡くなるまで続いた従妹同士の友情/人間関係は難しいと言うけれど/関係の硬直化という問題/関係の適切な距離感をどう持つか/失望や傷ついた気持ちの取り扱いのカギは想像力/非血縁者の女性同士の関係による看病や看取り

◆ 第9章 やわらかいフェミニズム

歴史を振り返る●1970年、日本でウーマンリブが誕生/元気印の女性たち/ジェンダーの視点でのカウンセリング/DV被害者への支援を担う/性暴力の構造や被害者心理に関する理解が深まる/今も昔もいちばん多いのは家族に関する悩み /守備範囲は「女性が抱えるすべての問題」
フェミニズムが後退を余儀なくされた理由●女性の多様化と女・女格差/「フェミニストの潔さ」への反発を認識していたか/フェミニズムの学問化がもたらした負の影響
フェミニストカウンセリングをアップデートするために● これまで射程に入っていなかった女性たちへ照射を/「小さな物語」を紡ぐ――差別の重層化・交差性を丁寧に検証する/自立の見直し――依存性についての新しい視点/依存はネガティブな様態だろうか/「やわらかいフェミニズム」へ

<関連書>

『わたしを生きる知恵 − 80歳のフェミニストカウンセラーからあなたへ河野貴代美著

生きる勇気と癒す力  性暴力の時代を生きる女性のためのガイドブック』エレン・バス, ローラ・デイビス 共著  原美奈子, 二見れい子 共訳

セクハラ・サバイバル – わたしは一人じゃなかった』佐藤 かおり著


Comments are closed.