今日に抗う
『今日に抗う 過ぎ去らぬ人々』
中村一成
カバーデザイン協力:鄭愛華
四六判 ソフトカバー 320頁
ISBN978-4-380-24005-8 C0036
定価:本体2500円+税
日本、世界の頽落は止め処ない。
本書の最初と最後がパレスチナになったことはその最悪の形での証明になっている。
「いまとは違う未来」「生きるに値する世界」を求める者たちの生き方、人間であることを語る言葉には「新たな普遍性」(徐京植)に向けた可能性が詰まっている。
ぜひ紐解いて欲しい。思いを分かち持ちたいと願う者にとってそれは、帰る場所、そして道標となるはずだ。
他者を敵視し、蔑み、人を分断する言葉が大手を振るう。
「言葉」が徹底的に破壊され、レイシズムの蔓延と歴史否認・改竄の横行に歯止めがかからなくなった。
倫理の底が抜けた社会だからこそ、不条理に立ち向かった先人たちの思いを残したい。彼らはどのように生き、どんな「世界」、どんな「明日」を展望してきたのか、そしていかに状況を打開してきたのか。そして私たちにどのような「問い」を残して逝ったのか。先立った方々だけではない。
時を同じくして進行していた闘いについても書いた。
ヘイトとの闘いが拓いてきた展望の数々、それらの闘争が、過去最悪を更新しつづける「いま」の中で取り組まれ、煌めきを放ってきたことが少しでも伝わればと思う。
(著者 まえがきより)
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<書評・紹介記事>
- <応答した言葉が光となり>(文:韓賢珠さん)「朝鮮新報」2024年9月25日
- <理不尽な現実の中で闘う人たち その生き方と紡ぎ出された言葉>(田沢竜二さん評)『週刊金曜日』2024年10月11日
<もくじ>
▼2017年
01アル=ソムード、そこにとどまって闘う――ジュリアーノ・メル=ハミース
▼2018年
02果たせなかった約束を抱える――在日高齢者無年金訴訟(鄭福芝さん)
03やっぱり同胞やで、民族やで――ウトロで生き、ウトロで死ぬ(金君子さん)
04異端こそが道を拓く――在日ハンセン病回復者を生きる(金泰九さん)
05オレの心は負けてない――人間回復の記録(宋神道さん)
06あの咆哮こそが「言葉」――「済州四・三」(康実さん)
07彼女たちにとって読み書きとは――在日高齢者無年金訴訟(鄭在任さん)
08二〇一八年六月一八日、関空で――「持ち込み荷物」没収問題(神戸朝高生)
09「半難民」は笑う――「忘れられた皇軍」(姜富中さん)
10俺はこの国で主人公になる――「反入管法闘争闘士」(高英三さん)
11「ゴメン」と言わないでください――高校無償化裁判(大阪高裁判決)
12希望には、二人の娘がいる――高校無償化裁判(東京高裁判決)
13死者の選別に抗して――済州島四・三(李福淑さん)
▼2019年
14「日本」を撃ち続けた奇人――戦後補償裁判(宋斗会さん)
15……ほんとうに苦労したなあ――ウトロの徴用工(崔仲圭さん)
16言葉への責任が描いた光景――徳島県教組襲撃事件(冨田真由美さん)
17私、私たちは問われている――高校無償化裁判(原告と支援者たち)
18人間の尊厳を護る法を――「選挙ヘイト」(カウンターたち)
19「思想」とは何か――実践としての歴史研究(朴鐘鳴さん)
20「いま」とは違う、「いま」を求めて――京都朝鮮学校襲撃事件(被害者たち)
21イルム名前から――本名裁判(金稔万さん)
22投げ付けた言葉の礫――在日朝鮮人障害者無年金訴訟(金洙榮さん)
23アンタら一体、誰の子泣かしとんねん――幼保無償化排除(保護者たち)
24オモニ、ぼくを助けてください……――徴用工判決(柳大根さん)
25ここで駄目なら、居場所がなくなる――レイシャルハラスメント裁判
▼2020年
26判決を紙切れにしない――京都朝鮮学校襲撃事件(朴貞任さん)
27ヘイト暴力に対峙できる刑事司法を――京都事件以降の立法運動
28半地下で待つ正義の実現――勤労挺身隊裁判(梁錦徳さん)
29差別行政を市民力で覆す――さいたまマスク問題
30平気で損ができた人――朝鮮人被爆者救援(李実根さん)
31これからを生きる動機づけの場――在日生活支援センター・エルファ
32心の痛みを汲みとってくれた――レイシャルハラスメント裁判(地裁判決)
33「野垂れ死にの精神」を生きる――劇団「態変」(金滿里さん)
34掻き毟るようなあの声――旧日本軍「性奴隷制」問題(鄭書云さん)
35二〇〇二年九月レバノン――もうひとつの「九・一一」
36「進歩」とは想像力の産物――高校無償化裁判(広島高裁判決)
37まだ見ぬ「公正な社会」を求めて――ヘイトと闘うジャーナリズム(石橋学さん)
▼2021年
38あり得べき世界への一歩を刻む――ヘイト葉書事件
39飼い慣らされない身体性――ウトロの語り部(姜景南さん)
40馬鹿野郎と言ってやりたい――在日高齢者無年金訴訟(玄順任さん)
41生身の人間から考える― .在日外国人の権利伸長運動(田中宏さん)
42「誠信の交わり」を求めて――ウリハッキョマダン(鄭想根さん)
43「新たなつながり」という勝利――桜本に育まれて(中根寧生さん)
44三三歳、「異郷の死」――入管体制(ウィシュマ・サンダマリさん)
45この倫理なき社会で――レイシャルハラスメント裁判
46「韓国」を生きる――元死刑囚(李哲さん)
47狼や見果てぬ夢を追い続け――東アジア反日武装戦線
48「他者なき世界」という病理――レイシャルハラスメント裁判(高裁判決)
▼2022年
49焼け跡に立ちあがる言葉――ウトロ放火事件
50彼女の言葉は、岸辺に流れ着いた――伊藤詩織さん
51次の壁を突き崩すまで、もう少し――ウトロ放火事件
52一世からつないだ魂のリズムで――ウトロ平和祈念館
53反差別の報道に垣根はいらない――ウトロ放火事件
54ウリハッキョで「出会う」――クルド人と朝鮮人
55歴史的病理を葬るために――入管体制(ウィシュマ裁判)
56司法に刻んだ小さいが大きな「一歩」――ウトロ放火事件(判決)
57沈黙に抗して――ネットヘイト訴訟(崔江以子さん)
58故郷ホームとは、創るもの――東九条マダン(朴実さん)
59 この「おめでとう」を育てるために――レイシャルハラスメント裁判(勝訴確定)
▼2023年
60希望を探して――ネットヘイト訴訟(崔江以子さん)
61報道は差別と闘う――ヘイトスラップ訴訟(石橋学さん)
62彼らの想定を裏切る番――入管法改悪反対運動
63なぜ認めてくれない――徴用工問題(李春植さん)
64 小さい流れも合わさっていけば本流さ――大阪コリアタウン歴史資料館(金時鐘さん)
65 前へ。前へ。ともに――ネットヘイト訴訟(崔江以子さん)
66 未来を拓くハンメの言葉――アリラン ラプソディ
67闘争と文学と宗教と――高史明という生き方
68卑怯者たち――入管法改悪反対運動
69時の務めに向き合う――震災虐殺一〇〇年
70一人の本気が状況を変える――ヘイトスラップ訴訟控訴審(石橋学さん)
71さべつはゆるしません――ネットヘイト訴訟判決(崔江以子さん)
▼2024年
72人間であること――ガザ
◉ 著者プロフィール
中村 一成(なかむら・いるそん)
ジャーナリスト。1969年生まれ。毎日新聞記者を経て2011年からフリー。
在日朝鮮人や移住者、難民を取り巻く問題や、死刑が主なテーマ。
映画評の執筆も続けている。
著書に『声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々』(インパクト出版会、2005年)、『ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件─〈ヘイトクライム〉に抗して』(岩波書店、2014年)、『ルポ 思想としての朝鮮籍』(岩波書店、2017年)、『映画でみる移民/難民/レイシズム』(影書房、2019年)、『「共生」を求めて 在日とともに歩んだ半世紀』(編著、田中宏著、解放出版社、2019年)『ウトロ ここで生き、ここで死ぬ』(三一書房、2022年)など。
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