ウトロ ここで生き、ここで死ぬ
『ウトロ ここで生き、ここで死ぬ』
中村一成
定価:本体2,800円+税
四六判 ソフトカバー 352頁 (2022.5/11発売)
ISBN978-4-380-22003-6 C0036
写真:中山和弘©️2022年
マイノリティが「お上品」に生きられるほど、ウトロを取り巻く日本社会は優しくない。
彼彼女らの「闘い」は、この社会が不正で成り立っている事実、欺瞞を暴いてもいた……
私が地区に通い始めて20年が過ぎた。
一世は全員鬼籍に入った。多くの二世ともお別れした。ウトロの歴史を目撃してきた飯場跡や集会所、南端のフェンスなど、地区内にあった、
あるいは今も存在する幾つかの物言わぬ「証人たち」を訪ね、そこにまつわる人々の記憶を掘り起こし、彼彼女らの記録として残したい。
それは、ウトロの人々から少なからぬ時間と言葉を頂戴した者の一人としての義務でもある……
かつて地区の玄関に立てかけられた看板の文言を思い出す。打つ手がなくなった2002年、それでも闘い抜くと決めた団結集会で採択された集会宣言である。
住民たちの記憶と願いを撚り合わせ、今後の闘いの肝を記した宣言「オモニの歌」は、この言葉で結ばれた――
「われら、住んでたたかう」。
止めどなく後退していくこの世界で、様々な位相で、とどまって、闘い抜いた者たち。本著はその記録である。
◉ 中村一成(なかむら・いるそん)
ジャーナリスト。1969年生まれ。毎日新聞記者を経て2011年からフリー。
在日朝鮮人や移住者、難民を取り巻く問題や、死刑が主なテーマ。映画評の執筆も続けている。
著書に『ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――<ヘイトクライム>に抗して』(岩波書店、2014年)、『ルポ 思想としての朝鮮籍』(岩波書店、2017年)、『映画でみる移民/難民/レイシズム』(影書房、2019年)、『「共生」を求めて 在日とともに歩んだ半世紀』(編著、田中宏著、解放出版社、2019年)など。
◉ もくじ
-
- 第1章 飯場跡
- 第2章 学校、それから
- 第3章 フェンス――違法と合法の境界
- 第4章 高台の学校
- 第5章 水――協働の始まり
- 第6章 「立て看」の家
- 第7章 小さな「統一」
- 第8章 今、そしてこれから
<書評・紹介記事>
- 『月刊ヒューマンライツ』3月号<「もう日本人恨んだまま死なんですむわ」闘いの実践が育んだ共生>(文公輝さん評)
- 『みすず』1・2月合併号<「緒局面を濃やかに描き出す」2022年読書アンケート>(鵜飼哲さん選)
- 「ウェブ論座」2022年12月26日<[2022年 本ベスト5(上)]当事者の証言、史料から今の日本を見る>(M&J 梅田店 福嶋聡さん評)
- 『人権と生活』2022年12月号<在日朝鮮人を取り巻く問題にも多くの視座を与えてくれる>
- 「解放新聞」2022年11月5日号<この本はウトロを証明する貴著な歴史的記録である>(具良鈺さん評)
- 「高麗博物館会報」2022年11月号<ウトロ 平和祈念館の背景を知るのに好適な書>
- 「自由法曹団通信」2022年7月1日号<『ウトロ ここで生き、ここで死ぬ』 中村一成著を勧める(上)>(神原元さん評)
- 「部落解放」2022年9月号<底が抜けた差別社会で生きること>(前田朗さん評)
- 『西日本新聞』2022年8月20日<日本社会の真の姿を映し出す鏡>(田村元彦さん評)
- 『中日新聞』『北陸中日新聞』(夕刊)2022年8月15日<今も進行する差別の実態>(藤井誠二さん評)
- 『毎日新聞』(京都版)2022年8月12日<支局長からの手紙 – 終わらない戦後>(京都支局長・野上哲さん)
- 『自主』(韓統連大阪 8月号)<「ウトロ 平和祈念館」訪問と中村一成著『ウトロ ここで生き、ここで死ぬ』>(源さん)
- 「ふぇみん」2022年8月5日<「市民社会」の平安から排除されたがゆえに獲得したおおらかで苛烈な生活感覚>(葉さん評)
- 「図書新聞」2022年7月16日<日本人への強烈な問題提起 – 現場を歩いたからこそ得られる説得力によって、ずっしりとした読後感>(佐藤大介さん評)
- 「週刊 読書人」2022年7月8日<生々しく綴られる喜怒哀楽の生き様 – 戦後とこれからを振り返るきっかけに>(ちゃんへん.さん評)
- 「京都新聞」「山陽新聞」「神戸新聞」「新潟日報」「河北新報」「上毛新聞」「熊本日日」「徳島新聞」「愛媛新聞」「南日本新聞」「千葉日報」「山梨日日新聞」「日本海新聞」「大阪日日新聞」他2022年7月2日<全身で声を聴き姿を示す>(共同通信配信:伊地知紀子さん評)
- 「長周新聞」2022年6月28日<一人一人の生い立ちや経験、その感情のヒダに迫り、また歴史的な背景も見逃さない>
- 「沖縄タイムス」「琉球新報」「中国新聞」「北日本新聞」「福島民友」「秋田魁」「下野新聞」他 2022年6月25日<「不在の存在」を世に示す>(共同通信配信:伊地知紀子さん評)
- 「週刊金曜日」2022年6月24日<ジャーナリズムを超えた豊穣な在日文学として読んだ>(崔真碩さん評)
- 「月刊イオ」2022年7月号<ウトロ 守り抜いた“生”、深く描く>(鄭美英さん評)
- 「朝鮮新報」2022年6月10日<ウトロ の歴史は即ち「闘い」の歴史であると本書が語りかける>(紗さん評)
- 「京都民報」2022年6月5日<市民の結束が紡いだ100年の歴史>
- 「毎日新聞」2022年6月4日<20年にわたる膨大な取材で地域の歴史を紡ぎ上げたルポルタージュ>(鵜さん評)
- 「社会新報」2022年5月18日<在日コリアンの苦闘の足跡、豊かな共同性>(田沢竜次さん評)
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