部落差別の原因

『部落差別の原因 ― 国家による天候支配の思想=仏教の「殺生禁断」
川元祥一

定価:本体2,200円+税
四六判 ソフトカバー 240頁
ISBN978-4-380-24001-0 C0036

部落差別が始まる原点はどこにあるのか!?
部落差別を拡大・浸透させた根拠とその原理、社会的に定着させた過程を検証。差別被害の救済を!
 なぜ「屠者」が「差別」され「醜業」と呼ばれるのか。肉食文化の旺盛な今も差別は続いている。なぜ「仏教の殺生禁断思想や陰陽道の触穢思想」に基づくといわれる部落差別が今日まで残るのか。
 問題解決のために、誰もが納得できる実証的、科学的手法による原因、根拠の解明が必要であると私は考える。そのために、部落差別が始まる原点・端緒の実証、そしてその原点・端緒が社会に拡大していく根拠とその原理、それが社会に定着する歴史的過程を実証的、科学的に示す必要がある。
 「仏教の殺生禁断思想、陰陽道の触穢思想」を指摘するにとどまらず、それらがどのような思想・観念なのか、どのように作用して、人が人を差別するのか。誰がどのような経過で「差別される人」になるのか。
 なぜ明治初期の農民たちはあれほどに「穢多・非人」を嫌い、憎んだのか、その差別の実態はよくわかった。私が今知りたいのは〝なぜそうなのか〟だ。
 そうした潜在意識を実証的に、より具体的な科学として把握するため「部落差別の原因」として考察する。(序文より)

◉著者:川元祥一(かわもと・よしかず)
作家、評論家
1940年兵庫県神戸市に生まれ、岡山県津山市で育つ。1965年明治大学文学部卒。
伝統芸能研究・千町の会 代表。東京学芸大学非常勤講師。立教大学非常勤講師。東日本部落解放研究所 所員。東京都人権啓発センター評議委員(2016—2022年)

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◉チラシ◉

◉もくじ◉

序文

第1章 その原点・端緒
1節 部落差別が始まる原点にある思想
1 神仏習合政治=国家仏教の戒律の裏側「破戒=悪=排除」
2 仏教が政治的、制度的影響力を持った
3「護国三部経」に見られる「不殺生戒」

2節 仏教の戒律「不殺生戒」
1 「不殺生戒」はほぼすべての教団の第一義的戒律
2 「金光明経最終巻」の偏見=一方的・独善的価値観=部落差別の原点

第2章 仏教による「天候支配」「自然支配」の妄想
1節 神仏習合政治と仏教の戒律
1 天皇に尽くす仏教、その教説――「護国三部経」より
2 高圧的で差別的な仏説

第3章 日本では「殺生禁断」が「天候支配」のイデオロギー化する
1節 この国で初めて「殺生禁断」「肉食禁止」を発令した天武天皇
1 家畜に絞られ「金光明経最終巻」に通底する禁令
2 奈良時代、諸天皇の詔は「天候異変」防止=仏教の「殺生禁断」

第4章 「天候支配」=「殺生禁断」が新しい「型」となる
1節 検非違使の誕生とキヨメ=穢の排除
1 天候支配の新しい「型」
2 新しい「型」が社会的構造=部落差別の原因となる
3 検非違使の「罪業・罪穢」と「触穢意識」

第5章 社会的絶対矛盾
1節 「差別構造」を定着させた「落し穴」
2節 検非違使の本来の役務「行刑」が「代行」に変わっていく
1 「被差別部落」形成の祖型
2 百姓は牛・馬を殺して食べていた

第6章「不殺生戒」「殺生禁断」に対立した人々と文化
1節 国家と民間の対立・矛盾
1 皇極天皇が参加した「殺牛馬雨乞」・六四二年
2 縄文時代からの狩猟・肉食文化を継承する祭と神事
3 「動物供犠」を「汚穢(とが)」「咎祟(たたり)」と見る「官人」「神職=ハフリ」たち
4 巫覡(ふげき)禁止令について
5 濫僧=俗法師=声聞師=雑芸能=賎民

第7章「殺生禁断」が豊作をもたらしたとする記録
1節 「殺生禁断」=「天候異変制御」の妄想が民間に広がる
1 多発された「殺生禁断」と、その結果
2 鎌倉時代の天候支配――武士による自然支配と仏教

2節 やがて「被差別者」とされる「屠者」「革作」「皮田」
3節 後北条氏の「革作」と、その集団(共同体)の形成過程

第8章 妄想の頂点――「神風」
1節 「神風」と「部落差別の原因」に共通する天候支配のイデオロギー
2節 「神風」という虚像
1 偶然が巻き起こす神話「神風」
2 「神国神話」の背景
3 鎌倉幕府から地域へ発布した「制札」

第9章 仏教による「現世利益」と「殺生禁断」
1節 叡尊と忍性による「屠者」などの組織化・労動力化
1 戒律復興運動の西大寺系僧・叡尊
2 叡尊の弟子・忍性の「殺生禁断」
3 鎌倉幕府の現業=民衆支配
2節 東北地方支配のイデオロギー

第10章「部落共同体」の成立――百姓=分業連合の中の部落の仕事
1節 「部落共同体」形成直前
1 百姓村の「屠者・革作・皮田」――百姓とは分業連合体を意味する
2 「細工」として現れる諸職人
3 差異があって成立する「分業」――分業の水平化
2節 百姓村「村落共同体」の「分離・分断」――ヨコ社会がタテ社会に
3節 百姓として分業連合体が共存する様子――「皮田・革作」を中心に
1 牛を買って我が家に戻る皮田・革作
2 草場権(斃牛馬処理範囲)の原型

第11章 「百姓村の分離・分断」――生活に必要な多様な分業が国家に握られる
1節 「兵農分離」「農商分離」を見直す
2節 「兵農商分離」では分類・分析できない社会の全体像
1 「奉公人」としての「皮田・革作」
2 「権利と義務」=「双務関係」の意味するもの

第12章 部落共同体の「双務関係」
1節 各地にある行刑と斃牛馬処理権の関係
1 戦国大名による「禁制」「折紙」
2 「穢多」「非人」の権利と義務
3 長吏頭・弾左衛門と燈心
4 大阪など地域の様子
2節 諸職における「タテ」構造の支配
1 農民と双務関係
2 鍛冶、大工など職人の場合
3節 江戸時代の職業的カテゴリー
1 「士・農・工・商・エタ・非人」を職業として見直す

2 変質する「共同体」――失ったヨコの関係を取り戻すことは出来るか――
3 諸職・分業と国家
4 部落共同体の場合
4節 現代的差別の体質、その構造の始まり
1 「百姓村の分離・分断」と部落共同体
2 一村独立した「エタ村」その共同体に集中する差別
3 職業でなく「空間」を「エタ村」として差別し始めたのは国家だった

第13章 民間の「雨乞」に残る動物供犠「殺牛馬」
1節 天候支配=殺生禁断なのになぜ「殺牛馬雨乞」が残るのか?
1 真逆の形の雨乞「穢の供犠」―その記憶と伝統
2 中世末、百姓・農人の「雨乞=祈雨」「止雨」の願い
3 「不浄の物を入れる」となぜ「雨が必ず降る」か?

第14章 江戸時代の雨乞の特徴
1節 乖離した国家と民衆・百姓(百姓は農民だけではない)
1 仏教を軸にした「雨乞」
2節 仏教の政治「宗旨人別帳」
1 部落差別の「原点、その端緒」
2 「穢」を受け入れる民衆の素地

第15章 民間に残る伝統としての「動物供犠」「殺牛馬雨乞」
1節 農民が部落に「依頼」する「殺牛馬雨乞」の型
1 近・現代、農民主体の「雨乞」―「動物供犠=殺牛馬=穢を入れる雨乞」
2 高谷重夫と寺木伸明が示す近・現代の「動物供犠雨乞」
2節 農村からの「依頼」と部落の「請け」の型
1 江戸時代農民の記録――大阪・箕面の雨乞
2 太平洋戦争前後の殺牛馬雨乞――見聞録
3 「そんなことをしても効果はない」――宍粟郡神戸村
3節「殺生禁断」による天候支配は国家の間違い

終章 まとめ
1節 科学的思考と「妄想」「虚像」の闘い
1 マイナスイメージの脱却
2 「殺生禁断」による「天候支配」を反省、訂正する
3 原因と現状の調査と科学的精神を
2節 「解放令=賤称廃止令」はなぜ失敗したか――現状と新法
1 部落問題の深層から見る
2 肉食文化の伝統と、神仏習合政治の矛盾、対立、その解禁
3節 現代も「部落差別」が未解決、とする国家の認識
1 「解放令」の弱点を克服する
2 新法の「基本的理念」
3 部落差別特有の歴史、そこに生れた文化総体からの解放・解決
4 原因を示すことでそれら総体からの解決が見えてくる


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