<近刊>ヘイト・クライムと植民地主義

『ヘイト・クライムと植民地主義 − 反差別と自己決定権のために

  木村 朗(鹿児島大学)前田 朗(東京造形大学)共編

四六判 ソフトカバー 303頁 (2018年刊行)
ISBN978-4-380-18003-3 C0036
予価:本体2300円+税

植民地主義の克服という視点から、歴史と現在を往還。
18名の執筆者が「反差別、反ヘイト、自己決定権」という視座を探る!

一 序論
1 前田 朗/私たちはなぜ植民地主義者になったのか

二 植民地主義――差別とヘイトの根源を問う
2 中野敏男/「継続する植民地主義」という観点から考える沖縄
3 香山リカ/ネット社会のレイシズム状況
4 安田浩一/ヘイトのこちら側と向こう側―この社会を壊さないために
5 野平晋作/日本の植民地主義の清算とは何か―沖縄、「慰安婦」問題への向き合い方を通して
6 乗松聡子/自らの植民地主義に向き合うこと―カナダから、沖縄へ

三 在日朝鮮人に対する差別とヘイト
7 金東鶴/「高校無償化」制度からの朝鮮学校除外に対する闘い
8 辛淑玉/「ニュース女子」問題とは何か
9 朴金優綺/差別とヘイトに抗して―人種差別撤廃委員会への訴え

四 アイヌに対する差別とヘイト
10 結城幸司/差別に抗するアイヌ民族
11 清水裕二/アイヌ人骨帰還問題をめぐるコタンの会の報告
12 石原真衣/「サイレント・アイヌ」と自己決定権のゆくえ

五 琉球に対する差別とヘイト
13 島袋 純/琉球/沖縄に対する差別に抗して
14 髙良沙哉/琉球/沖縄における植民地主義と法制度
15 新垣 毅/沖縄の自己決定権を求めて
16 宮城隆尋/奪われた琉球人遺骨
17 松島泰勝/新たなアジア型国際関係における琉球独立―日米安保体制からの解放を求めて

六 結論
18 木村 朗/沖縄(琉球)差別の起源と沖縄問題の本質を問う――グローバル・ファシズムへの抵抗と植民地主義への告発

 

<はしがきより>

朝鮮半島、及び在日朝鮮人に対する差別とヘイトはもとより、特に先住民族アイヌと琉球(沖縄)に対する民族差別問題、「沖縄ヘイト」、米軍基地問題をめぐる「構造的差別」などの問題を「反差別、反ヘイト、自己決定権」の視座から問い直すことが本書の課題である。

アイヌモシリ及び琉球は、近代史を見るならば典型的な植民地である。にもかかわらず、日本ではそのことさえまともに認識されていない。アイヌモシリ併合及び分割や琉球併合及び分割は、イギリスによるアイルランド分割・北アイルランド併合と同じで、植民地の代表例である。植民地化に続く構造的差別の根源を解明しつつ、現在のアイヌ差別や琉球差別を照らし出すことが必要となる。東アジア全体の文脈に照らして日本植民地主義とは何だったのかを問う必要がある。

植民地主義、ヘイト・スピーチ、差別を克服するためにと言っても、発言者の立場性を抜きに語ることはできない。植民地主義の「加害側」に属する者にとって、それは「内なる植民地主義との闘い」となるであろう。植民地主義の行使に直接関与した歴史を背負っている場合だけでなく、日本国籍保持者の多くが植民地主義の歴史から利益、便益を被ってきたことは否定できない。自らの立場を踏まえつつ、目の前のヘイト・スピーチや差別にいかに立ち向かうのか。単に主観的な告白によっても、単に客観的なつもりの研究によっても、事象の解明や問題解決への道は開かれない。自らの思考を常に問い返す方法論を鍛えることが喫緊の課題である。

植民地主義の「被害側」に属する者にとって、課題はあまりに直接的であり、感情的性格を有する。課題の親密性を踏まえつつ、歴史的パースペクティヴで物事を把握する方法論が求められる。
また、琉球(沖縄)は日本(本土、ヤマト)との関係では「被害側」に立つが、朝鮮やアジア各地域との関係では、意思に反して「加害側」に立たされることもある。東アジアにおける民衆の連帯を模索する思想と運動も、歴史や国際緊張の枠組みから逃れることはできない。

加害側にせよ被害側にせよ、その歴史も経験も多様であり、一律に語ることができないことはもちろんである。本書では、それぞれの論者が自らの立場性を踏まえて議論を展開しつつ、そこから間主観的で、より総合的な分析を心がけるように努めた。それゆえ、執筆者間で見解を調整することはせず、各自の見解を提示することにした。

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