こわい、こわい
『こわい、こわい – 短編小説集』
黄英治(ファン・ヨンチ)
四六判 ソフトカバー(188×127×17mm)
ISBN978-4-380-19002-5 C0093 272頁
本体1800円+税 (2019年4月上旬発売)
在日朝鮮人の死には、植民地主義の歴史と現在が深く刻印されている。残念ながら、どんなに平穏であろうとしても、在日朝鮮人は植民地主義の暴力から、いまだ解放されていない。
「植民地主義は他者の系統だった否定であり、他者に対しての人類のいかなる属性も拒絶しようとする凶暴な決意である。故に、それは被支配民族を追いつめて、『本当のところおれは何者か』という問いをたえず自分に提起させることになる」(フランツ・ファノン『地に呪われたる者』みすず書房)
本短編集に通底するもうひとつのテーマは、植民地主義――ヘイトスピーチ、ヘイトクライムに対する足搔きにも似た抵抗と対峙である。これも唇を噛みしめながら、ひたすら反復している。と同時に、反復は少しずつずれている。小説でしか表現できない虚構的現実が、読者にとって新たな経験となり、不可視の何かを実感的に捉える手掛かりになれば、と願う。
私たちは、植民地主義の克服という世界中が同一の問題を抱えている世紀に生きているのは間違いない。そして、私たちは〈いま〉から逃走できない。〈いま〉が私たちの時代であり、〈いま〉を生きるしかない。だから私は、これからもこの〈いま〉ではない、別の〈いま〉を求めて細々と書きつづけていくだろう。(あとがきより)
◎黄英治(ファン・ヨンチ)
1957年岐阜県生まれ。
2004年に「記憶の火葬」で<労働者文学賞2004>を、2015年に小説「あばた」で<第41回 部落解放文学賞>を受賞。
著書に『記憶の火葬―在日を生きる―いまは、かつての〈戦前〉の地で』(影書房、2007年)、『あの壁まで』(影書房、2013年)、『前夜』(コールサック社、2015年)、『在日二世の記憶』(共著、集英社新書、2016 年)、韓国語版『前夜』(韓程善訳、宝庫社、2017 年)、韓国語版『あの壁まで』(鄭美英訳、2019 年刊行予定)
<収録作品>
Ⅰ
- 墓守り
- 墓殺し
- ひまわり
- 煙のにおい
- あばた
- 君が代アリラン
Ⅱ
- こわい、こわい
- 歌う仕事
- 鏡の国
- あるところ……
- 新・狂人日記
- 小さな蓮池
- フィウォナ――希願よ!
<書評・紹介記事>
- 「労働情報」<日本人にはわからない「恐怖感」 小説だから識る声と目線>
- 「北海道新聞」<在日朝鮮人が置かれた現在の状況をリアルな逸話として作品化 – 岡和田晃さん評>(2019.10.27)
- 「月刊イオ」<怒っても苦しんでもない社会へ>(2019.6月号)
- 「図書新聞」<忘却に対抗する記憶 – 林浩治さん評>(2019.6.1)
- 「朝鮮新報」<記憶の「死」と「殺」の物語たち – 李英哲さん評>(2019.515)
- 「思想運動」<作品を貫く在日朝鮮人の葛藤 – 堀川久司さん評>(2019.5.1)
- 「図書新聞」<文芸時評- 岡和田晃氏>(2019.4.13)
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