ヘイト・スピーチ法 研究序説

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ヘイト・スピーチ法 研究序説 ―差別煽動犯罪の刑法学―』
MAEDA Akira, Introduction to Hate Speech Act.
◆日本図書館協会選定図書

●三一書房創業70 周年記念出版●


<書評>


定価:本体8,000円+税 A5判 ハードカバー 791頁
ISBN978-4-380-15000-5  C0032
前田朗

(1955 年,札幌生まれ。中央大学法学部,同大学院法学研究科を経て,現在,東京造形大学教授 (専攻: 刑事人権論,戦争犯罪論)。朝鮮大学校法律学科講師、日本民主法 律家協会理事、NGO国際人権活動日本委員会運営委員)

本書はヘイト・クライム/ヘイト・スピーチ法研究の第一歩として、本格的検討の前提となる基礎知識を提供することを目的としている。これまでの研究では概念定義も不正確であり、時に恣意的な定義のもとに議論がなされてきた。憲法論の中のごく一部の狭い枠組みでの議論も目立つ。比較法研究も始まったばかりである。本質論抜きの法技術的解釈も目立つ。そうした現状を乗り越えるために、ヘイト・クライム/ヘイト・スピーチ法の議論に不可欠な最低限の基礎知識を紹介し、その土俵づくりを目指す。

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<本書の構成>

Ⅰ部 本書の課題と構成

第1章    ヘイト・クライムの現在
第1節 問題意識と課題
第2節 ヘイト・クライム/ヘイト・スピーチ現象

第2章    先行研究と本書の構成
第1節 レイシズム研究の動向
第2節 憲法学の動向
第3節 刑法学の動向
第4節 本書の構成

Ⅱ部  ヘイト・クライムとヘイト・スピーチ

第3章 ヘイト・クライムの定義
第1節 問題意識
第2節 ヘイト・クライムの定義
第3節 ヘイト行為者とヘイト団体

第4章 被害者・被害研究のために
第1節 問題意識
第2節 ヘイト・クライムの被害者
第3節 ヘイト・クライムの被害

第5章 ヘイト・スピーチの類型論
第1節 ヘイト・スピーチ行為の分類
第2節 人道に対する罪としての迫害
第3節 人道に対する罪としての「慰安婦」
第4節 戦争宣伝とヘイト・スピーチ

Ⅲ部  ヘイト・スピーチの法的構成

第6章 国際人権法における差別禁止
第1節 国際人権法のメカニズム
第2節 世界人権宣言を読む
第3節 国際人権法と日本
第4節 人種差別撤廃条約と日本
第5節 マイノリティ権利宣言と日本
第6節 先住民族権利宣言と日本

第7章 ヘイト・スピーチの国際人権法
第1節 人権条約におけるヘイト・スピーチ
第2節 人種差別撤廃委員会一般的勧告三五
第3節 国連ラバト行動計画

第8章 ヘイト・スピーチ法の制定状況
第1節 本章の課題
第2節 人種差別撤廃委員会第七〇会期
第3節 人種差別撤廃委員会第七一会期
第4節 人種差別撤廃委員会第七二会期
第5節 人種差別撤廃委員会第七三会期
第6節 人種差別撤廃委員会第七四会期
第7節 人種差別撤廃委員会第七五会期
第8節 人種差別撤廃委員会第七六会期
第9節 人種差別撤廃委員会第七七会期
第10節 人種差別撤廃委員会第七八会期
第11節 人種差別撤廃委員会第七九会期
第12節 人種差別撤廃委員会第八〇会期
第13節 人種差別撤廃委員会第八一会期
第14節 人種差別撤廃委員会第八二会期

第9章 ヘイト・スピーチ法の適用状況
第1節 本章の課題
第2節 人種差別撤廃委員会第七〇会期
第3節 人種差別撤廃委員会第七一会期
第4節 人種差別撤廃委員会第七二会期
第5節 人種差別撤廃委員会第七三会期
第6節 人種差別撤廃委員会第七四会期
第7節 人種差別撤廃委員会第七五会期
第8節 人種差別撤廃委員会第七六会期
第9節 人種差別撤廃委員会第七七会期
第10節 人種差別撤廃委員会第七八会期
第11節 人種差別撤廃委員会第七九会期
第12節 人種差別撤廃委員会第八〇会期
第13節 人種差別撤廃委員会第八一会期
第14節 人種差別撤廃委員会第八二会期

第10章 ヘイト・スピーチ法の類型論
第1節 法体系
第2節 法形式
第3節 実行行為
第4節 犯罪動機
第5節 歴史否定犯罪(アウシュヴィツの嘘)
第6節 刑罰

第11章 ヘイト・スピーチの憲法論
第1節 憲法学の変遷と現状
第2節 ヘイト・スピーチ規制の憲法解釈

<はしがきより>

表現の自由を守るためにヘイト・スピーチを刑事規制する。それが日本国憲法の基本精神に従った正当な解釈である。国際人権法もヘイト・スピーチ規制を要請している。ヘイト・スピーチ処罰は国際社会の常識である――本書は以上の結論の前提となる基礎情報を紹介することを主要な課題とする。

ヘイト・スピーチ法に関する基礎研究はほとんど手つかず状態であり、断片的な情報しか存在しない。偶然得られた断片的情報を根拠にして議論がなされ、非常に歪んだ状況がつくられ、およそ国際社会に通用しない通念が形成されてきた。「ヘイト・スピーチの規制か、表現の自由か」という奇妙な二者択一が持ち出され、表現の自由の優越的地位を理由にヘイト・スピーチ規制を否定するのが当たり前とされてきた。被害実態から目を背け、極端な場合にはヘイト・スピーチには被害がないかのごとく語る例も少なくない。現実を無視し、日本国憲法の基本精神も国際人権法も無視した議論が横行してきた。しかし、日本国憲法の基本精神に従って人格権を尊重し、法の下の平等を確保し、マイノリティの表現の自由を守るためにヘイト・スピーチを刑事規制する必要がある。

本書は、ヘイト・スピーチ法について議論するための最低限の基礎知識を提供する。

Ⅰ部「本書の課題と構成」では、本書の課題を確定するために、第1章「ヘイト・クライムの現在」において、近年におけるヘイト・クライム/ヘイト・スピーチ事件を検討し、第2章「先行研究と本書の構成」において、レイシズム研究、憲法学、刑法学の研究動向に学ぶ。

Ⅱ部「ヘイト・クライムとヘイト・スピーチ」では、ヘイト・クライムとヘイト・スピーチという用語の定義自体が必ずしも共通の理解を得られていないので、第3章「ヘイト・クライムの定義」において、主にアメリカ社会学における研究を中心に紹介し、第4章「被害者・被害研究のために」では誰が被害者とされやすく、どのような被害が生じるかを確認する。その上で、第5章「ヘイト・スピーチの類型論」において、ヘイト・スピーチが単一の行為ではないことから、作業仮説として類型論を提示する。

Ⅲ部「ヘイト・スピーチの法的構成」では、ヘイト・スピーチ法について検討する前提として、第6章「国際人権法における差別禁止」において、差別禁止の必要性と当然性を示し、第7章「ヘイト・スピーチの国際人権法」において、ヘイト・スピーチの刑事規制を要請する国際人権法の考え方を紹介する。次に、第8章「ヘイト・スピーチ法の制定状況」において、国際社会におけるヘイト・スピーチ刑事規制の具体的状況として、百カ国を超える法律制定状況を紹介する。第9章「ヘイト・スピーチ法の適用状況」においては、判決や統計など適用状況を紹介する。第10章「ヘイト・スピーチ法の類型論」では、前2章における紹介をもとに、世界のヘイト・スピーチ法の動向を整理する。最後に、第11章「ヘイト・スピーチの憲法論」において、ごく簡潔ではあるが憲法論に立ち入って検討し、今後の法的議論の手掛かりとする。

以上を通じてヘイト・スピーチ法に関する最低限の基礎知識を提供し、まっとうな議論を始める出発点としたい。

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